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ハラハラと涙が流れた
漱石の悲しみ小林信彦さんの哀しみ
小林さんは、おそらく、紋切りや、予定調和、流行に乗ることや、多数意見に賛同すること
通俗的解釈に対して、恥の感情を持っている作家であろう。

それを承知であえていうと、これは、主人公を、坊ちゃんから、うらなりに代えた
スピンオフ小説で、『坊ちゃん』が、痛快青春小説だとする説に異を唱え
『ドーランの下に涙の喜劇人』的な小説であると解釈した上で書かれた小説である。

上記は、もちろん僕の拙い解釈で、これですべてが語れているとは思わないで欲しい。

ぼくは、この小説を読んで、ハラハラと涙が流れたけれども、涙が流せるのは、
男で、しかも、年寄りで、しかも未練がましい、やつだけかも知れない。

なお、ひとつだけ、僕が、この本で傷があると思ったのは、後半に添えられた
「創作ノート」の中で、坊ちゃんを「B型ヒーロー」だと、断じるところである。
血液型の判断は、座興ならまだしも、この本にはそぐわない

漱石の悲しみ、小林信彦さんの哀しみ
小林さんは、おそらく、紋切りや、予定調和、流行に乗ることや、多数意見に賛同すること
通俗的解釈に対して、恥の感情を持っている作家であろう。

それを承知であえていうと、これは、主人公を、坊ちゃんから、うらなりに代えた
スピンオフ小説で、『坊ちゃん』が、痛快青春小説だとする説に異を唱え
『ドーランの下に涙の喜劇人』的な小説であると解釈した上で書かれた小説である。

上記は、もちろん僕の拙い解釈で、これですべてが語れているとは思わないで欲しい。

ぼくは、この小説を読んで、ハラハラと涙が流れたけれども、涙が流せるのは、
男で、しかも、年寄りで、しかも未練がましい、やつだけかも知れない。

なお、ひとつだけ、僕が、この本で傷があると思ったのは、後半に添えられた
「創作ノート」の中で、坊ちゃんを「B型ヒーロー」だと、断じるところである。
血液型の判断は、座興ならまだしも、この本にはそぐわない

可もなく不可もなく
著名な文学の愛すべき登場人物を主人公にした作品で、文学賞を受賞したというので読んでみたが、どうということもない読後感である。原作は誰もが知っているので最初から登場人物はつかめる。あの本を異なる切り口から解いてみたらたらこうなる、という一つの例といえる。ほかの登場人物、例えば赤シャツや堀田の視点から語らせることもできよう。
昭和9年から振り返るという発想は面白い。五十台後半らしいうらなりは肝硬変で先行き長くないことが暗示されているが、堀田は戦後何歳まで生きたのだろうか、とか想像するのも楽しい。
赤シャツらが制裁を加えられる原作の結末は、昔読んだときはただ痛快と思っただけだが、考えてみれば今なら暴行傷害で刑事事件になっているところだ。維新からまだ三十数年の頃だから武家の空気がまだ残っていたのか。
ただ、新しい解釈とか驚愕の裏話があったとかの新鮮な感動はない。あくまでも地味で小心なうらなりの後半生という本である。


うらなり (文春文庫) 小林 信彦

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