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過ぎてゆく人々と時代。
枯山水のような本。


原っぱは死語に近い。

使われていない土地は、空き地や更地とは言われ、金を生まない土地、あるいは駐車場やビルを造れば収入があるはずの土地になっている。

今では、原っぱはドラえもんでしかみれないのか?昔、原っぱは、本や絵の余白と同じ意味があったのだと、この本を読みながら、改めて思った。

その原っぱが、空き地や更地ではなく原っぱであった時代を、人物のたたずまいで残照のように描いている。

描かれる人物、情、会話、街の景色は、強く主張しない。

去ってゆく人々。

生きてきた時代が、過ぎてゆく。

その様が、静かに描かれている。

池波正太郎は、この本を原っぱのような佇まいにするために、どの言葉、どの文章を削ったのだろう。

読みながら枯山水を思った。

池波正太郎の最高傑作
鬼平犯科帳、剣客商売、仕掛人シリーズといわゆる時代劇もので有名な著者の書いた数少ない現代小説。

 著者は絶大な人気をj誇る小説家であるとともに、エッセイストとしても評価が高く数多くの著作を残す。

 舞台が現代となることで、エッセイストとして著者が持つ鋭い視点で社会を捉える力が存分に生かされている。

 また晩年に書かれたこの作品、主人公の設定に著者が浮かび上がってくるところもあり半自叙伝的ともいえる至玉の一冊。

 主人公はすでに筆を置いた劇作家。

 劇作家を引退した現在、すきな映画の評論を書きながら老いた日々をすごしている。

 にある日飛び込んでくる自分の過去の作品の再演の話。

 「今の演劇界ににはそぐわないよ」と考える主人公をよそに動きゆく周りの人々。

 主人公の前に現れた引退したはずの伝説の女優。

 やがて「過去の人」であった主人公の心が動き出す。

 主人公の周りに集う人々の光や影が失われてゆく下町の風景とともに鮮やかに描かれています。

 私自身は池波正太郎の最高傑作だと感じる作品です。

 池波正太郎のエッセイを読んだことのある人、ない人、時代劇を好きな人、嫌いな人すべての人にお勧めしたい作品です。
原っぱ (新潮文庫)池波 正太郎

体脂肪計
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紛れも無い傑作の一つ
ん?、なかなかです
昨日、わずかな時間を利用して書店に行き購入 ”青春の門”は特に当方にとり、感慨深い作品群である。

はじめて読んだのは、中学の時父の本箱にあったのを、”盗み見?!”したことかな。

なぜ盗み見か?中学生には、この猥雑さと手に取るように把握できる情景描写、(このころの五木寛之はすごい)読んではいけない本と考えていたからである。

特に祖父母、父親が育った環境が、この本の舞台であり、いろんなシーンが実名で出てくるあたりは、なつかしく、甘酸っぱい気持ちになる。

伊吹信介(=信介しゃん)、主人公の破天荒な行動には憧れもあったかもしれない。

ともかく、20数年ぶりに1晩で読み上げてしまった。

放浪編は函館が舞台であり、当方はあまり好きではない。

読むなら、好奇心旺盛な主人公の”筑豊編”である。

若者の葛藤
日本の国民作家である五木氏の小説の中でも、「青春の門」は最も知名度の高い小説だろう。

誰もが通り過ぎる、あの哀歓の混ざった青春という時代を描いている。

私は今、その時代の真っ只中にいるので、この作品の主人公、伊吹信介と自分を照らし合わせていると、一際彼の喜びや苦悩が押し寄せてくるようだ。

青春とは出口のない葛藤なのだと、全ての巻を読み終えた時に感じた。

しかしその経験は決して無意味な物ではなく、人間が一人前に成長していく上で必要な経験であるという事も、この小説は私に示唆してくれた。

数ある青春小説の中でも、紛れも無い傑作の一つだ。
青春の門(第三部)放浪篇(講談社文庫)五木 寛之

リップグロス
複雑な側面があるのは事実
歌心にあふれた、薄幸な名作
旋律美と歌心にあふれた、ラフマニノフを彷彿とさせるような、とてもステキな交響曲です。


単に旋律が美しいだけではなく、多様な音楽様式・作曲技法が凝縮されており、繰り返し聞きたくなる曲です。


沼尻竜典指揮の東京都交響楽団も立派に演奏しきっており、さらに資料的意味においてもこの
ディスクの価値を高めています。


この作品は、「皇紀2600年」を祝う音楽として作曲されていたことから、戦後は思想的政治的等
の理由から長らくアンタッチャブルになっていたようです。

確かに、戦争との関連性という複雑
な側面があるのは事実ですが、このような魅力的な作品を埋もれたままにしておくのは、やはり
惜しいことだと思います。


この作品が生み出された歴史的背景や、その後の作曲家の足跡(戦後、懺悔の念に苛まれながら
44歳で胃ガンにより夭逝した)を辿ることは、過去の歴史を直視することにもつながり、その中
には、私たちが未来に向けて生かしていかなければならない「何か」が含まれているような気が
します。


邦人交響曲の名作
橋本國彦:交響曲第1番 橋本國彦

アイブロー
このひとの言語感覚は、硬質で透明
硬質で透明な短編集
世界中、さまざまな場所を舞台につむがれる短編集。

それぞれの土地の空気が物語ひとつひとつに閉じこめられて、写真集を眺めたような読後感。

このひとの言語感覚は、硬質で透明。

「20マイル四方で唯一のコーヒー豆」なんて、タイトルだけでノックアウトだ。

表題作「きみのためのバラ」。

ウナ・ローサ・パラ・ティというスペイン語のひびきがすてき。

「これから百年でも忘れないという気持ちで彼女の顔を見て」という一文にぐっとくる。

それって恋の本質だよなあ。

それにしても、これだけ多彩な語り手を持つ小説を、それぞれに合う自然な文体で書きわける技のあざやかさよ。

おそれいりました、という感じ。

真の意味での名作とは
映画マニアのはしくれである自分にとって池澤氏は、ギリシャの巨匠テオ・アンゲロプロス作品の字幕翻訳(彼自身とも親交が深い)としての方が馴染み深い。

世界各地を舞台に、出会いと人生をテーマとして綴られる物語。

文学的な修辞や技巧を省いた、直接的とも言える話法は、高名な肩書きからは拍子抜けする程の読み易さだ。

しかしそれはあたかも、制球力に長じたベテランピッチャーの円熟した投球術、あるいは好守備をファインプレーに見せない名野手のフィールディングを思わる、力強い安定感を思わせる。

なおかつ味わいを感じさせながら、淀み無く一気に読ませる風通しのいい文体がいい。

ヒューマンストーリーの良心を見るような作品群である。

個人的には「全ての結婚は国際結婚のようなもの」という言葉が真理を突いているようで耳に痛い(笑)「ヘルシンキ」、若かりし日の米大陸一人旅(現在の妻とのドイツ旅行での、同じ場面から始まるという導入部がいい)のメキシコ人少女との切ない解逅を描いたタイトル作(こんな引用も何だが、まるで昔聴いていた「クロスオーバー・イレブン」のストーリー・テリングもかくやだ)が秀逸。

その中で、まるでライトノヴェルのように呆気無い「レギャンの花嫁」がやや場違いだが、初出元がレジャー情報誌だからしょうがないか。

旅の断片
久々の短編集。

テーマを絞ったものではなくて、スケッチのように何種類かの光景が描かれている。

なんでもない光景から物語を感じ取ることができる。

これも旅をすることの醍醐味。

日常から離れることで、日常を認識することができる。

日々の生活に追われていると、ぼくらの感覚は麻痺してしまうのかもしれない。
きみのためのバラ池澤 夏樹
みんな子供時代には、秘密の場所を持っているはず
子供は、大人より秘密を持っているかも
江國さんの小説を読むようになり、中学生の時に手にした一冊。

多分、みんな子供時代には、秘密の場所を持っているはず。

秘密基地はもちろん、大人達の知らない路地裏、大きな遊具の下、庭にある木陰、神社の境内など数え切れないでしょうね。

“すいかの匂い”には、退屈した少女が過ごした、幻に似た一時が描かれています。

熱湯で濡らし、絞ったタオルで体を拭くシーンでは、脳内で爽快感が味わえます。

“蕗子さん”は、少女の家にわけあって暮らす謎めいた女性の物語です。

蕗子さんの好きな「ちょろぎ」は響きでも文中においても印象深いです。

“あげは蝶”では、自分自身に、両親にコンプレックスを持つ少女が登場します。

自分の置かれた環境の味気なさ、虚しさにうんざりした少女は、あげは蝶に誘われてそんな世界にさよならを告げます。

“はるかちゃん”は、きれいな顔をして、動作の遅さから「のーたりん」と呼ばれるはるかちゃんのお話です。

主人公は病院通いが日課の虚弱な少女であり、孤独であっても、マイペースに、ただただ周囲に追い越されていくはるかちゃんを細かく描写しています。

※この文庫本には計11の物語が収録されています。

誰にとっても、単なる過ぎ去った日々でしかないものを、江國さんは繊細に、まるでつんざくような蝉の声がそこに在るように、水面に映った日差しがきらきらとこぼれだすのが目の前に存在するように描いていらっしゃいます。

これを読めば、皆さんの脳裏にも過去に置いてきた濃密な「夏」が浮かび上がるかもしれません。

うだるような暑さの夏の夕方、涼しい風を待ちながら、傍に冷たい飲み物を置き、この本を読めたら素敵だと思います。

すいかの匂い
残酷であって綺麗でもある。

そんな不思議な空間を共存させる素敵な一冊です。

懐かしい匂いとか懐かしい人はだれにでも共感できるものであって。

それから人にはだれにもいえないことってのがあって。

その大事な部分を見抜かれた気がしてゾクっとしました。

読んでて次のページをめくるのが楽しくなるってきっとこうゆうこと。

だれにでもある幼い頃のキヲクというものを辿りながら自身と物語とをリンクすることができるので読みやすいと思います。

また、短編小説だからこそ伝わる味のよさがこの小説には詰まってる気がします。

すぅんとする感覚が残ります
11人の少女の11個のお話。

幼い少女の私だけの秘密と決めた行動や出来事が小さい子特有の無邪気さと残酷さでできている。

それは、かつて自分も経験してきた、持っていた秘密に対する後ろめたさを思い出す。

大人になってから、こんな感覚を思い出すなんて…とちょっぴり懐かしい、心もとない気持ちになる1冊です

すいかの匂い (新潮文庫)江國 香織
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